家族信託の動画「⑤自己信託」の解説
家族信託の動画「⑤自己信託~贈与後も財産管理~」
(YouTubeサイトに移動します。)
通常の「贈与」は、贈与の対象となった物に
担保が設定されているなどのことがない限り、
贈与を受けた者(受贈者)がその物について
何の制限もない所有権を取得します。
つまり、もらってしまえば、もらった者(受贈者)が
使おうが、捨てようが、売ろうが、好きにできます。
(排他的権利とも呼ばれます。)
最近、相続税対策などで贈与が注目されているようですが、
贈与も契約の一種で、あげる者(贈与者)ともらう者(受贈者)の
意思の合致によって成立します。
あげる方が一方的に「あげた」と言っても贈与は成立しません。
つまり、もらう方は当然、財産を贈与された事実を知っている、
財産が自分の所有となったことを知っているわけです。
自分の物になったから、自分の好きにします!
と、売ったり、使ったり、好きにしても誰も文句は言えません。
排他的権利である所有権はもらった者(受贈者)に移っているからです。
動画のように、株式の議決権の行使についても同じで、
息子は株を全部もらった以上、株主総会で社長である父の解任決議も可能です。
自己信託(信託宣言)自己信託(信託宣言)
そこで、「自己信託」を利用するのですが
自己信託は見方によっては不思議な信託で
委託者=受託者、つまり、見た目は財産の移動も
名義の変更もありません。
動画の例では、株を信託財産、父が委託者兼受託者、
息子を受益者にしています。
信託では、譲渡税、贈与税、相続税については
受益者が財産を所有しているものとして
課税されます。(受益者等課税)
(※ ブログ「家族信託と税金」をご覧ください。)
ですので課税上は、信託によって株の所有は父から息子に移った、
つまり、株が父から息子に贈与されたとして取り扱われます。
しかし、父は受託者ですので、信託財産である株は
父が引き続き管理をすることになります。
そして、株の議決権行使は管理行為に含まれると考えられ
父が引き続き議決権の行使ができます。
(解任される心配がなくなります。)
課税上は株価の安いうちの贈与として取り扱われ、
肝心の議決権は父が握っておくことができるのです。
動画の④まででご紹介した信託は、
委託者と受託者の契約で成立するものでしたが、
自己信託は委託者=受託者ですので契約ではありません。
一人でするということで「信託宣言」とも呼ばれます。
そして、自己信託(信託宣言)は公正証書で行うのが原則です。
税金の世界には「名義株」「名義預金」という言葉があるそうです。
株やお金を贈与したと、名義だけ変えておいて、
実際はもらった方は知らない、つまり贈与契約は成立してない場合、
あげた方が死亡して相続税の調査をされたときに、
「名義株」「名義預金」は贈与が成立していないとして、
遺産に含まれる、相続税の対象となるということがあるそうです。
しかし、自己信託の場合、株や預金の名義は受託者、
つまり、あげた方のままです。
しかし、公正証書で日付と受益者がはっきりしますので、
相続税の調査があっても、信託を設定した時点での受益者への
贈与として取り扱われ、相続税の対象となりません。
(設定時、贈与税の対象にはなります。)
自分で自分に財産を託する自己信託・・・
少し不思議に思われるかもしれませんが
このような活用方法が考えられます。
※ その他の動画(YouTubeサイトに移動します)