結婚契約書の法的性質
9月12日の朝日新聞の朝刊に
最近、結婚契約書を作成される方が多い
という記事が載っていました。
家事の分担のこと、お互いの介護のことなど
これからの結婚生活における約束を
契約書にするというものです。
ところで、記事にも書いてありますが、
夫婦間の契約については注意すべき点があります。
民法754条で「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、
夫婦の一方からこれを取り消すことができる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。」と
規定されています。
ということは、「結婚契約書」を作成しても、
婚姻中であれば第三者の権利を害しない限り
いつでも取り消せることになります。
(ただし、婚姻関係が破たんしている場合は、
取り消しはできないとする判例があります。)
では、「結婚契約書」を作成しても無意味でしょうか?
婚姻関係が破たんしたら取り消せないから
契約書を作る意味はある、
確かにそうですが、結婚するときなのに、
それだけの理由では少しさびしい気がします。
契約書を作成するとなると、その過程で
お互い相手の考え、価値観を確認することになります。
そして、話し合った結果を文章にするという作業になります。
もちろん、相手のことを理解したと思えたから
結婚を決意するのだと思いますが、
実際、いろいろなことを具体的に話し合うと
考え方の違う部分が明らかになると思います。
そして、違う部分をお互いが納得するものにしていくのか、
あるいは、自分と違う部分を認めてそのまま受け入れるのか、
契約書作成の過程で、そういった作業がされていくことになると思います。
契約書が完成したときには、
自分と比べて相手の同じ部分も、違う部分も
つまり、相手の全部を、受け入れる心の整理ができると思います。
結局、同じも違うも、いいも悪いも、相手を全部受け入れることができれば
結婚生活は円満にいく・・・
法律的うんぬんではない、もっぱら私の考えですが。
結婚契約書について、法的性質だけ考えれば、
取り消されるかもしれない不安定なものです。
しかし、お互いに理解し合おうという真剣な気持ちで
法的な性質を超えて、安定したものになる、そう思っています。