「倒産隔離機能」について~家族信託の活用
※ 信託については、ブログ「信託のしくみ」
「信託の小まとめ」「「受託者」とその監督」もご覧ください。
いくら信頼できる人に受託者になってもらっても、
もし、受託者が自分の事業に失敗して、
多額の債務を負ってしまったら、
信託して預けた財産も差し押えられるのでしょうか。
信託すると財産の所有者は受託者になります。
しかし、財産から利益を受けるのは受益者です。
受託者の所有権は形式的とも言えます。
そこで、信託法23条では、
受託者の、信託に関係ない債権者は
信託財産に強制執行(差し押え)できないと定めています。
ですから、受託者が自分の事業に失敗して
多額の借金を負っても、
その債権者は信託財産を差し押えることができません。
一方、信託財産を管理するうえで受託者が負った債務
(信託財産責任負担債務 例 信託した貸家の修繕費用)について、
その債権者は信託財産に強制執行ができます。
また、信託財産は受託者の所有名義ですので、
信託に関係ない委託者の債権者も、
信託財産を差し押えることができません。
ですから、信託をした後に
委託者が保証をかぶって債務を負っても、
その債権者は信託財産を差し押えることができません。
※委託者が受益者の場合、受益権(例 配当を受ける権利)を
差押えることはできます。
つまり、信託財産は信託と関係のない債権者から
いわば守られている状態です。
これを、信託の倒産隔離機能と呼びます。
(個人でも、事業者でなくても「倒産」という言葉を使います。)
しかし、この機能は強制執行を免れるために悪用されかねません。
そこで、債権者を害する目的で行われる信託は
詐害信託として取り消しの対象となります。(信託法11条)
また、委託者=受託者の自己信託では、
所有者が変わらず、いつから、
財産が信託されているのかわかりにくいので
公正証書等の作成、または確定日付のある証書での
受益者への通知を義務付け、
信託がされた日付が明らかになるようにしています。
委託者が信託をしたときに債務を負っていない、
または信託に関係のない債務があって
十分に返済できる状態であれば、
その後、委託者が債務を負ったり
その債務の返済ができなくなっても信託財産は守られます。
受託者の、信託に関係ない債権者からも守られます。
そういう意味では、財産を信託することは、
将来の万が一に備えることにもなります。
財産の管理・承継について、遺言・相続のご相談、
家族信託(民事信託・個人信託)の設計・契約・運営のご相談は
北九州市小倉の角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。