家族信託の活用例です。
(信託についてはブログ「信託のしくみ」
信託の小まとめ」もご参照ください。)

例 高齢となった自分に代わり、
 次女に財産を管理して欲しい

  私の所有する土地には、                       
  私の自宅と貸家、次女夫婦の自宅が建っています。      
  私は最近、高齢となったためか物忘れがひどく、        
  貸家の契約や管理に不安があります。              
  貸家の老朽化も進んでおり、将来、大規模な修繕も必要です。
  次女は、以前から貸家業を手伝って状況を熟知しており    
  今の内に、すべてを任せたいと考えています。          
  しかし、成年後見人は私の判断力が衰えてからのもので、  
  裁判所などの監督下におかれると聞いています。        
  大規模な修繕や管理は次女の判断のみで行ってほしい。  
  また、今からすぐに次女に任せるためによい方法は・・・    
  

1 判断能力があるうちの財産管理

急速に高齢化社会を迎える日本において、
判断能力が衰えた高齢者に代わって
財産を管理するための成年後見制度は
不可欠のものだと思います。

本人に判断能力がある間は、成年後見人が
財産を管理することはできません。
本人が、誰かを代理人として財産管理を委任することも可能ですが、
貸家の賃借、修繕、関連した銀行での手続きなどは、
委任契約の有効性や、本人の確認を求められると
代理人が行うには、わずらわしさを伴うこともあるかもしれません。

2 信託の設定

そこで考えられる信託の活用です。

父を委託者受益者、次女を受託者として、
貸家と預金の一部を信託します。
家賃は次女が受け取りますが、
父が受益者として次女から配当を受けます。
家賃の一部は将来の修繕に備えて、
信託財産にとどめておくことも考えられます。

信託された財産は次女の所有となりますので、
貸家の賃借、修繕の契約は次女の名前でできます。
信託された預金も次女名義となるので
窓口での手続きもやりやすくなります。

※ 次女は、自分の預金と区別して管理する義務があります。(分別管理義務)

信託の目的で、貸家の売却はできない、と定めておけば、
次女は勝手に売却することはできません。

3 判断能力が衰えてから

自分の手元に置いておきたい財産は、信託しなければ
もちろん父が自由に使えますし、
判断能力が衰えて成年後見人が選任されれば、
成年後見人がその財産を管理します。
生活に必要な財産は成年後見が管理しながら
本人の身上監護に努めることができるでしょう。

貸家については、引き続き次女が自分の判断で管理を続けられます。

このように、成年後見を家族信託で補えば
財産ごとに目的に合った管理ができます。

※ 父が死亡すると信託は終了し、
信託財産は長女が取得するなどと定めておけば、
信託契約が遺言の役目もはたすことになります。

信託は、判断の能力のある間から、
判断能力が衰えた時期、自分の死亡後まで、
財産の管理や承継をあらかじめ決めることができます。

日経新聞に家族信託の記事が掲載されていました。

「家族信託で財産守る 遺言効果を生前から」
(日経新聞 平成24年6月2日)

角田・本多司法書士合同事務所