福岡県司法書士会では
高校生、専門学校生なとを対象に
契約の基礎やトラブルについて知ってもらうために
司法書士を派遣して「青少年のための法律講座」を
開催するという取り組みをしていることを以前紹介しました。

昨日、私が講師としてある高校でお話をしました。
その中で、民事裁判から見た契約書の重要性について
お話をしたのですが、今日はその内容をご紹介します。
(少し難しいので、講座で普段はこの話はしていません。)

仮にある人が他の人にお金を貸したのに
返してくれないと民事裁判を起こしたとします。
相手は「自分は借りてない」と言っています。

民事裁判では、権利を主張する者が、
事実について主張・立証するのが原則です。
例で言えば、「自分はお金を返してもらう権利がある」と
言っている方が、お金を貸したという事実を
主張しなければならず、相手が認めないならば、
貸したという事実を立証しなければなりません。
立証できなければ、裁判に負けてしまします。

立証する、つまり証拠を提出することになります。
契約は口約束でも成立します。
しかし、口約束を裁判所で証明するのは困難です。

そこで、威力を発揮するのが契約書などの書面です。
お金の貸し借りなら、
「借用書」などの契約書面を作成することが多いと思います。

上の例で、相手方の署名と印鑑が押してある「借用書」が
証拠(書証)として提出されたとします。

民事裁判では、提出された書証に
①本人の印鑑が押されていれば、
その本人が押印したものと推定され
②本人が印鑑を押したのであれば、
その書面は本人の意思に基づいて作られたものと推定されます。

つまり、上の例で提出された「借用書」に
相手方の印鑑が押してあれば、
相手方の意思でその「借用書」は作られたのだろうと
裁判所は考える(推定する)わけです。

すると今度は、「自分は書いてない」
「誰かが勝手に印鑑を押した」
「内容は全然理解していなかった」などどいう事実を
相手方が反証とし裁判所に提出しなければなりません。

あくまで「推定」ですから、絶対に覆らないというわけではありません。
しかし、このような事実を裁判所にわかってもらい、
「推定」を覆すことは結構困難なことになります。

一度、契約書に署名して印鑑を押すと、
後から、「契約書の内容は知らなかった」などということは、
簡単には通用しないということになります。

当然のことですが、契約書などに署名して印鑑を押すときは、
良く内容を確認することが大切ということが、
民事裁判のしくみからもわかると思います。

※ 一般の方に理解していただくために、
法律の用語とは少しニュアンスの違う言葉も使っています。

ブログ内の関連記事

「青少年法律講座」のご紹介

北九州市八幡西区、八幡東区、若松区、戸畑区、
小倉北区、小倉南区、門司区にお住まいの方で、
民事裁判手続きについてのご相談は
角田・本多司法書士合同事務所までご連絡ください。

角田・本多司法書士合同事務所