このブログで何度か遺言を作成されることを勧めていますが、
今まで相談を受けて「遺言さえあればな・・・」
と思うことが何度もありました。

その代表例の一つが、子どものいない夫婦の場合です。

配偶者はいつでも相続人になります。
その他に、1 子 2 直系尊属(親、祖父母・・・)3 兄弟姉妹の順で相続人になります。
(詳しくはブログ「遺産は誰のものに?~相続人の範囲1」をご覧ください)

上の例で、夫が死亡し、
夫の親、祖父母・・・も先に死亡しているときは
妻と、夫の兄弟姉妹が相続人になります。
2人で住んでいた夫名義のマンションを
妻名義にしようとすれば、遺産分割協議で
他の兄弟姉妹全員の合意が必要です。

反対する兄弟姉妹がいたとしても、
妻が引き続き居住することは可能と考えられます。
しかし、遺産分割協議が成立しない間、
マンションは妻と兄弟姉妹の共有状態です。
もし、将来、施設に入る資金にするため
マンションを売ろうと思っても全員の合意が必要です。
共有状態は不安定な面があります。
(ブログ「不動産の共有」もご覧ください)

もし、夫が生前「マンションは妻に相続してもらい、
必要なら売却して、老後の資金にして欲しい」と
思っていても、遺言がなければ、
夫の兄弟姉妹の合意なしには実現しません。

遺言で「マンションは妻に相続させる」としておけば、
夫の兄弟姉妹の合意も印鑑もなしで、
マンションを妻名義にすることができるのです。

夫の兄弟姉妹が協力的ならよいのですが、
夫の兄弟姉妹が母親の違う兄弟姉妹で、
夫の生前も交渉がなく
今どこにいるのかも分からない場合は大変です。
ホームページの相続のページ「ケース3 夫との間に子供はなく、
夫には交流のない母の違う兄弟がいる」
にもご覧ください)

父母の一方が同じなら、兄弟姉妹になります。
会ったこともない夫の兄弟姉妹を探し出して
合意してもらい、印鑑をもらう・・・
妻の負担は非常に大きいものになります。

子のいない夫婦の場合、遺言を残すことが、
一方の配偶者のために非常に重要となることがあります。
前妻との間に子供がいるが、
今の妻との間には子どもがいない場合も同様だと思います。

角田・本多司法書士合同事務所