前回、お話ししたように、受益者の死亡により、
他の者が新たに受益者となる信託を
後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託と呼び、
遺留分に注意する必要があります。

遺言による遺贈などにより、相続分がなくなった、
または少なくなった相続人は、ある一定の割合を主張できることがあります。
その割合を遺留分、主張する権利を遺留分減殺請求権といいます。
(ブログ「遺言と遺留分の話」をご覧ください。)

 

例として、最初の受益者を夫、夫死亡後の第2受益者を妻、
妻死亡後の第3受益者を長男とする信託で考えてみます。

夫が死亡すると、妻は受益者となります。
受益権は信託財産から生じる利益を受ける権利ですが、
妻は信託により受益権を取得しているのであり、
夫からの贈与でもなく、遺言による遺贈でもありません。
しかし、これに遺留分減殺請求権を認めなければ、
他の相続人と比べて不公平です。

というわけで、上の例で、父の死亡で受益者が母となったことで、
長女、次男と次女の遺留分が侵害された場合には、
長女、次男と次女は遺留分減殺請求ができます。

そして、母が死亡するまで長男は受益者になりませんが、
①母は自分が生存している間の受益権を
②長男は母死亡後から信託終了までの受益権を
父の死亡により同時にそれぞれ取得したと考え、
それぞれが父の相続の時点で遺留分減殺の対象となります。

ですから、母が死亡して長男が受益権を取得したときは、
遺留分減殺請求はできまん。
遺留分減殺請求は、最初の相続のときのみということです。

信託も遺言と同じように、遺留分減殺請求の影響を受けます。
信託で決めたとおりに財産を確実に承継させるためには、
他の相続人に遺留分を確保できるよう他に財産を残すなどの
手当が必要となることがあります。

※ 課税においては、
 父の死亡時に、母が信託財産を取得したものとして相続税が、
 母の死亡時に、長男が信託財産を取得したものとして相続税が
 課税され、それぞれ課税の時期は異なります。

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