多重債務に陥り年月が経つと
債権者から返済を求める民事裁判を起こされることがあります。

そういう方から相談を受けたとき
「裁判所から送られてきた書類はどうしました?」と尋ねると
「受け取ると大変なことになると思い、受け取りませんでした。」
「受け取らなければ大丈夫と思い、受け取りませんでした。」
と答える方がいます。
本当にそうでしょうか?

1 特別送達

民事裁判を起こされると
起こされた方=被告には裁判所から
原告が提出した「訴状」と
裁判(口頭弁論)に出頭するようにと「呼出状」が送られてきます。

これらは「特別送達」という特別な郵便で送られてきます。
特別送達は封筒に「特別送達」の文字と
送付元の裁判所の名前が入っています。

特別送達は、書留郵便と同じように手渡しで、
受取人にサインや押印を求めてきます。
留守の場合はポストに「不在通知」などを入れますが、
「訴状」「呼出状」そのものをポストに入れることはありません。

最終的に、被告が「訴状」などを受け取ったかどうか
裁判所に報告されます。

2 書留郵便に付する送達

では、「特別送達」を、被告本人も家族も
受け取らなければどうなるでしょうか?

民事訴訟法107条に規定があり、
書留郵便またはこれに準じるもので送ります。
(書留郵便に付する送達)
そして、「発送の時に、送達があったものとみなす」
つまり今度は、受け取らなくても、受け取ったものとして裁判手続きが進みます。

3 裁判(口頭弁論)に欠席した場合

裁判所からの書類を受け取らないまま
手続きが進んだとして
裁判(口頭弁論)がいつあるかわかりませんから、当然、欠席です。

では、口頭弁論に欠席したらどうなるのでしょうか?

これは民事訴訟法159条に規定があります。
「相手方の主張した・・・事実を自白したものとみなす」
つまり、訴えた側(原告)の主張を認めたことになる、ということです。
そうすると、ほとんどの場合、
原告の主張どおりの判決が出されることになります。

裁判所の書類を受け取らない=全面敗訴の判決がされる、とも言えます。
受け取らないことでまったく良いことはないのです。

4 書類を受け取った上で対応を考えるべき

一度、判決が出され確定すると、
もはや覆すことはできません。

もし、相手の主張に事実と違っているところがあっても、
反論しなければそれが事実として判決が出されてしまします。

分割払いの希望を持っていても、
判決になれば必ず一括払いを命じる内容になります。

多重債務に陥っていると、
すでに分割払いも難しい状況かもしれません。
しかし、せめて相手が貸したと言っている金額や、
返してもらったと言っている金額に間違いはないか
確認をしておく必要はあると思います。

書類を受け取ってこれらのことを確認したうえで、
分割払いができるのであれば、
口頭弁論に出頭してそのことを言うべきですし、
分割払いも無理であるのならば、
破産手続きなど他の手続きを急ぎ、
仕事を休むくらいなら口頭弁論は欠席も検討する・・・

裁判所からの書類を受け取り、内容を確認したうえで、
対応を考えるべきだと思います。

(このことは貸金請求の裁判に限りません。)
また、誤った対応をしないためには
裁判所からの書類を受け取ったら
早めに司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

裁判所からの書類は、受け取らなければ
有利にはならず、不利になることが多い
そう考えてもらって差し支えないと思います。

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