少額訴訟について
訴訟=時間がかかるというイメージですが
少額訴訟は1回の裁判で即日判決が原則です。
今日は、少額訴訟についてお話しします。
1 少額訴訟の特徴
少額訴訟の主な特徴は次のとおりです。
1 原則、裁判(口頭弁論期日)は1回で終結(民事訴訟法370条)
2 原則、裁判が終結すると即日判決言い渡し(民事訴訟法374条)
3 簡易裁判所での60万円以下の金銭の支払いを請求する裁判に限る
(民事訴訟法368条)
通常の民事訴訟であれば、
必要な場合、裁判(口頭弁論)は何度か開かれます。
また、口頭弁論が終結してから事案によりますが、
2週間から1か月後ぐらいに判決が言い渡されます。
ですから、通常の民事訴訟であれば
最初の口頭弁論から判決言い渡しまで、
数か月から長ければ数年かかりますが、
少額訴訟ならば原則1日で終了です。
少額訴訟の場合、訴状に次のことを書かなければなりません。
4 少額訴訟での審理を求める旨
5 その年にその簡易裁判所に少額訴訟を求めた回数
(民事訴訟法368条)
つまり、途中で少額訴訟に切り替えることはできません。
また、同じ人が同じ簡易裁判所でできる少額訴訟は
年10回までとされています。
2 注意する点
訴状に少し書き加えるだけで、原則1回の裁判ができる
と、いい点が多い制度ですが、注意点もあります。
6 書面、証人などの証拠は、即時に調べられるものに限る
(民事訴訟法371条)
1回の口頭弁論のときに、証拠となる書面は全部出し、
必要なら証人も原則、連れてこなければなりません。
7 相手方が求めると通常の訴訟に移行する
(民事訴訟法373条)
相手方が裁判の最初で
「通常の訴訟でお願いします。」と言えば、
通常の訴訟となってしまい、
1回で終結、即日判決とはならないかもしれません。
8 原告勝訴でも支払い猶予、分割払いで判決されることもある
(民事訴訟法375条)
通常訴訟で原告勝訴ならば、一括払いの判決ですが、
少額訴訟では、3年を超えない範囲で、
支払い猶予、分割払いの判決がされることがあります。
この部分に対して不服申し立てはできません。
9 判決に不服でも1回の異議申し立てしかできない
(民事訴訟法377・378条)
通常訴訟では、控訴、上告と三審制ですが、
少額訴訟は同じ裁判所に1回の異議の申し立てしかできません。
例えば、お金を貸した、借用書もある、
相手も返していないことを認めている、
とういような場合は、1回の裁判で即日判決の
少額訴訟を利用するメリットはあると思います。
しかし、お金を貸したが借用書はない
証人をすぐに連れてこれない(証拠がない)、
相手が借りたことを否定している(事実を争っている)というような場合、
少額訴訟では、1回の裁判でお金を貸した事実を
裁判所に認めてもらうことは難しいかもしれません。
1回の裁判で、裁判所にこちらの主張を認めてもらえなければ、
敗訴判決となることになってしまします。
1回の裁判で認めてもらうために
相手が事実関係を争ってきても
十分な証拠を提出することができるか、
少額訴訟を選択する際は十分に検討する必要があります。
少額訴訟はいい点がありますので、
条件に合えば是非、利用を検討したい制度です。
しかし、早いからと少額訴訟に飛びついて
思わぬ敗訴判決をもらうことのないよう注意も必要です。