11月までの6回シリーズで

民事信託についてやその他にも多くの著書をお持ちで

司法書士の河合保弘先生を福岡にお招きした

民事信託の連続講座を受講しました。

 

様々な士業の方や、その他の分野の方々が参加し

事例についにてのディスカッションなども行い

多くの情報も得られ、非常に実りのある講座でした。

 

その講座でも議論したのが、遺留分制度についてです。

以前のブログ「受益者連続型信託と遺留分」の例で考えると・・・

信託と遺留分

家族信託を設定した時点の受益者を夫、

夫の死亡後の第2受益者を妻、

妻の死亡後の第3受益者を長男とした場合、

夫の死亡時に妻の取得する受益権と

将来、長男が取得する受益権が

他の相続人の遺留分減殺の対象となると考えられています。

 

信託契約で受益者が死亡した場合の

次の受益者についての定めがない場合は、

死亡した者の受益権は相続により承継されます。

遺言で承継する者を指定して、他の相続人の遺留分を侵害すれば

遺留分減殺の対象となることは当然だと思います。

 

しかし、上の図の例は、夫の死亡がきっかけだとは言え、

受益権を夫から相続で承継したのでもなく、

夫の遺言に基づいて承継したのでもありません。

 

信託契約に定めがない場合と異なり、信託契約に基づき

夫の死亡により夫が有していた受益権が消滅し、

新たに妻に受益権が発生し取得した

と、考えるほうが理にかなっているのではないか、

受益権は夫から妻に相続により承継されたものではないから

遺留分減殺の対象にならないのではないか・・・といった議論です。

 

生命保険の契約者と被保険者が同じで、その人が死亡したときの

受取人の保険会社に対する保険金支払い請求権は

契約者兼被保険者から相続したものではない固有の権利なので

遺留分減殺請求はできないことが原則で、これに似ている部分もあります。

 

現在は判例などはありませんので、

取得した受益権が遺留分減殺の対象になるものとして備える必要はありますが、

今後の動向を見守っていきたいと思います。

 

※ 平成30年12月13日追記

平成30年9月の地裁判決で、

家族信託が遺留分減殺の対象となると判断されました。

 

 

角田・本多司法書士合同事務所