成年後見は誰のための制度?
以前、成年後見についてお話ししました。
例えば、認知症などで判断能力が衰えてしまった高齢者が
わからないまま(あるいは身内が勝手に)
契約や遺産分割を行うと
その高齢者がわからないところで損害が生じる恐れがあります。
そもそも、本人が契約や遺産分割について理解していないのですから、
契約も分割協議も成立せず無効です。
判断能力が衰えた方に損害が生じないように、
必要な契約や遺産分割を適切に行えるように、
本人に代わって、財産管理や契約を行うのが成年後見人です。
成年後見人は家庭裁判所で選任されます。
(判断能力が衰える前に後見人をいわば「指定」する
任意後見契約もあります。これはあらためてふれます。)
成年後見人は本人の法定代理人ですので、
本人に代わって財産管理・処分ができますが、
成年後見人の好き勝手にできるのではなく、
もっぱら本人の利益のためだけに、
つまり、本人に不利益がないようその職務を行わなければなりません。
成年後見人には、本人の配偶者や子がなることが多いと思います。
その場合でも本人の不利益になる財産の使用はできません。
本人が元気なころ、気前よくお小遣いをもらっていたから
車を買ってもらったからといって、
後見人が選任された後は同じようにはできません。
(扶養義務のある家族のために生活費を支出することはできます。)
成年後見人が本人のお金を横領したという事件が少なくありません。
これは、業務上横領という犯罪に該当します。
このようなことがないよう、裁判所は
後見人に定期的に財産の状況を報告させたり、
後見監督人をつけたりします。
父親の後見人になったら、父親の財産を自由にできるなんてことはなく、
逆に、かた苦しく不自由に感じるかもしれません。
これは、成年後見制度は本人のためにあるのであり、
成年後見人は本人のためだけにその職務を行わなければならないからです。
こんなことを書くと、成年後見なんて不自由そうだから
利用したくないなんて思われそうですが、
しかし、成年後見人がいなければ有効な契約や遺産分割はできません。
そいうときには避けて通れない制度です。
超高齢化を迎える日本では、
今後、社会的にも重要な役割をになう制度になると思います。