将来、長男に住宅資金を贈与したいが・・・家族信託の活用
1 判断能力が衰えた後の贈与
本人の判断能力が衰え、成年後見人が選任されると
原則として、本人の財産を贈与することはできません。
これを認めると、本人の財産を守るための制度が
逆に本人の財産を脅かしかねません。
では、将来、長男が住宅を取得するとき、
孫が大学に入学するとき、
資金を贈与するつもりにしていても、
そのとき判断能力がなければ贈与できない・・・
その備えとして家族信託の活用が考えられます。
2 家族信託の活用
前回の例を引き継いで考えます。
父を委託者兼受益者、次女を受託者として、
貸家と預金(今回は贈与する資金を含む)の一部を信託し、
自宅や自分の手元に置いておきたい預金は信託しません。
そして、例えば、長男が住宅を取得する条件で
孫が大学に入学する条件で
それぞれ受益権の一部を取得するよう定めます。
父の判断能力が衰えた場合、成年後見人が
信託しなかった財産の管理を行います。
一方で、長男が住宅を取得することになったとき、
孫が大学に入学することになったときは、
それぞれが受益権の一部を取得して
信託財産からそれぞれの資金の給付を受けます。
3 契約書の重要性
信託であらかじめ、決められた金額を
給付できるように定めておけば、
本人の判断能力が衰えても給付することができ、
最初に決めた金額以上は給付できないため
悪用されることもありません。
このように、信託では柔軟な
財産管理、給付、承継を定めることができ、
非常に自由度が高いと言えます。
裏を返せば、しっかり契約書でそういったことを
定める必要があるということになります。
どういうときに、どういうふうにしたいのか、なるのか、
誰が見ても明確な内容にする必要があります。
あいまいな内容ですと、例えば
受託者と受益者の解釈が違ってしまって
かえってトラブルの元にもなりかねません。
また、色々な可能性を想定する必要もあります。
実情や考えは家族によって様々です。
とするとそれに合わせて作成するべき
信託契約の内容も家族によって様々ということになります。
信託契約は、不動産の売買契約や
アパートの賃貸借契約など、比較的定型的な契約に比べると、
家族ごとに様々で、服に例えれば既製服ではなく
「オーダーメイド」の契約となると言えます。
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