先祖代々の家と土地を妻→弟の長男と引き継がせるには
前々回、子供のいない夫婦について、
夫の所有する先祖代々の家と土地を、
夫の死亡後は、妻が住むために引き継ぎ、
妻の死亡後は、弟の長男に引き継がせるためには、
①夫の兄弟姉妹や弟の長男は、妻の相続人ではない
②夫が妻の死亡後、遺産を誰に引き継がせるか
指定することはできないと考えられる
③妻が「夫の弟の長男に遺贈する」と遺言を書いても、
後に遺言を書き替えられたりすると実現しない
などの問題点があるとお話ししました。
そこで、夫の生前に、先祖代々の家と土地を
確実に妻→弟の長男と引き継がせるために考えられるのが、
前回、しくみを説明した「信託」の利用です。
1 信託契約
まず、夫を委託者兼受益者、弟の長男を受託者
信託財産を家と土地、目的をその管理として、
夫と弟の長男で信託契約を結びます。
また、夫の死亡後は、妻が受益者となること、
妻の死亡後は、信託は終了し、
家と土地は弟の長男が取得する
(弟の長男を残余財産帰属者とする)ことも
契約で定めておきます。
この場合、受益者の受ける利益は
家に住んで、土地を使用することです。
信託によって、家と土地の所有権は弟の長男に移りますが、
夫婦は家に住んで、土地の利用ができます。
2 夫の死亡後
夫の死亡後も、妻は2番目の受益者として、
家や土地を利用する利益を受けることができます。
3 妻の死亡後
そして、妻が死亡した時は信託が終了して、
家と土地について弟の長男が完全な所有権を取得します。
夫が生前に家と土地を信託することで、
自分の死亡したときのことのみならず、
妻の死亡後の財産の引き継ぎ先を決めることができ、
しかも、自分も妻も生きている間、家に住み続けることができるのです!
弟の長男は、信託財産である間は、目的以外のことはできませんので、
所有者だからといって、家と土地を勝手に売却したりできません。
もし、弟の長男に借金があった場合、
この家と土地は弟の長男の所有であるにもかかわらず、
信託財産である間、
弟の長男の債権者は、これを差押えることはできません。
(多額の借金のある者が受託者としてふさわしいかは
検討する必要はあるでしょう。)
信託には、ほかにも活用方法が考えられます。
また、ポイントとなる特徴がいくつかあります。
次回以降、特徴をまとめて整理したり、
他の活用方法についてお話ししたいと考えています。