当事者が死亡した場合~家族信託の活用
信託では「委託者」「受託者」「受益者」が当事者といえます。
(信託についてはブログ「信託のしくみ」
「信託の小まとめ」もご覧ください。)
今日は、それらの当事者が死亡した場合のお話です。
1 すべてに共通すること
法律の原則をお話ししていきますが、
その前に、どの当事者が死亡した場合も、
信託契約などで、その当事者が死亡したら
次に当事者になる人を決めておくなど、
信託に定めがあればそれに従います。
法律の原則と違うことを望むのであれば、
信託契約などにそのことを決めておく必要があります。
2 委託者が死亡した場合
委託者が死亡した場合は、その相続人が委託者となります。
(委託者の地位を相続により承継します。)
ただし、遺言により信託をした場合は、
委託者の地位は相続人に承継されません。
つまり、委託者がいないこととなります。
3 受託者が死亡した場合
受託者が死亡した場合は、次の受託者を選ぶ必要があります。
信託で選び方を定めていればその方法で、
定めてなければ委託者と受益者の合意で選びます。
必要ならば裁判所に申し立て選んでもらいます。
受託者が死亡して1年間、受託者が選ばれなければ、
信託は強制的に終了します。
受託者の相続人は、受託者の地位を承継しませんが、
次の受託者が選ばれるまで、
信託財産を管理しなければなりません。
4 受益者が死亡した場合
受益者が死亡した場合は、相続人が受益者となります。
(受益権を相続することで受益者となります。)
信託契約などに定めがなければ、
通常の遺産と同じように、遺産分割協議で取得者を決める、
受益者が生前に遺言で相続する人を指定することができます。
5 注意する点
いずれも信託契約などに定めがない場合・・・
信託契約を変更するには、原則として
委託者、受託者、受益者の合意が必要です。
信託を終了させるには委託者と受益者の合意が必要です。
また、3のとおり、受託者は委託者と受益者の合意で選びます。
2から4でお話ししたように
受益者は相続人に承継されるとして、
遺言でされた信託では委託者が存在せず、
受託者が死亡すると、選ばれるまで受託者不在となります。
委託者や受託者が欠けると、
信託の変更、合意での終了ができない、
次の受託者を選任できず、信託が強制的に終了してしまう、
といったことが起こりかねません。
これを防ぐには、
最初に信託をする段階でいろいろなことを想定して、
例えば、受託者が死亡したときの次の受託者を指定しておく、
委託者と受益者だけで信託を変更できるようにしておく、
遺言による信託でも委託者を指定して欠けないようにしておくなど
実情に合わせて必要なことを定めておく必要があります。
誰が先に亡くなるかは、誰にもわかりません。
いろいろなケースを考えると、たくさんのケースが考えられて
信託で定めることがとても多くなることもありますが、
信託の目的が達成できるよう
最初にいろいろなことを想定して
信託の内容を決定することが重要です。