以前から、不動産の所有者が死亡した都度、
相続登記で名義変更(所有権移転)したほうがよいと
お話してきました。

相続登記をしなければ、見た目は死亡した人の名義でも、
実質的には、その時点での相続人の共有状態です。
前回までの共有不動産のところでもお話したように、
全員が合意しなければ、売るに売れない、貸すにかせない、
もちろん、遺産分割協議もできません。

所有者が死亡してすぐならば、
例えば、配偶者と子2人、合計3人の共有状態でも、
年数がたてば、いとこ同士の共有、さらに下の代の共有と、
共有者の人数が増えて、互いに疎遠な関係になります。
そうすると、もはや何もできない・・・ことも考えられます。

ところで、全員が合意しなければ共有不動産全体は売れませんが、
自分の持分のみを売ることはできます。
例えば、自分が3分の1持分を有しているならば、
その3分の1だけを売ることはできます。
共有の私道がある場合、家屋と敷地と合わせて、
私道の持分も売却されます。
(持分だけを貸すことはできません。)

そして、共有持分を売却できるということは、
共有持分を差押えることもできるということです。

例えば、土地の所有者が死亡して、
配偶者と子2人が相続人だったとします。
そして、全員で配偶者が相続するという遺産分割協議はしたものの、
相続登記をしていなかったとします。

子のうちの1人に借金があって、返済できなかったため、
債権者から裁判を起こされ、判決をとられました。
その子には特に財産はなかったため、
債権者は死亡した親名義のままだった土地を差押えました!・・・

正確には、債権者が相続人に代わって(代位して)
配偶者4分の2、子各4分の1の法廷相続分で相続登記をして、
借金をした子の4分の1の持分を差押えたのです。

配偶者には借金はないので、
配偶者の持分は差押えられませんが、
子の持分のみとはいえ、不動産が差押えらたのです。
(差押え後、競売になるのは
差押えられた子の持分のみです。)

ところで、遺産分割協議は、
相続開始時にさかのぼって効力が生じます。(民法909条)
つまり、上の例では、配偶者に相続させる協議が成立すれば、
所有者が死亡した時から、
配偶者1人の所有となったと考えるのです。

しかし、民法909条は「第三者の権利を害することはできない」
とも規定しています。
上の例の場合、「第三者」は差押えた債権者です。
とすると、「この土地は配偶者が相続すると遺産分割協議をして、
所有者が死亡した時から配偶者の所有となるのだから、
子の債権者は差押さえはできない」という理屈は通用しません。

先に、差押えの登記をした以上、
「第三者」として債権者は保護されます。

では、差押えられる前に、
配偶者名義に相続登記をしていたらどうだったでしょう。
結局、登記は早く「対抗要件」を
備えた方が勝ちという考え方から、
遺産分割による相続登記を先にしていれば、
債権者は差押えることができません。
(最高裁昭和46年1月26日判決)

(差押えるを免れる目的で、あわてて遺産分割協議をして、
相続登記をすると、後から取消されるおそれがあると思います。
「Q夫が財産を差押えられた、破産した・・・私はどうなる?」
ご覧ください。)

こういうことからも、
不動産の所有者が死亡したら、
その都度、早めに遺産分割協議をして
相続登記で名義を変更することが重要といえます。

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