不動産の共有2 ~共有物分割訴訟
前回の続きで、共有となった不動産のお話です。
前回の例で、ある土地を
Aが5分の2、Bが5分の2、
Cが5分の1の持分割合で共有していたとします。
各共有者はいつでも共有状態の解消(共有物の分割)を
請求できます。(民法256条)
共有者全員で分割の方法を協議するわけですが、
分割の方法は次の3つの方法があります。
1 現物分割
その名のとおり、共有物そのものを分割します。
例でいえば、土地を5分の2、5分の2、5分の1の
面積割合で切り分ける(分筆する)といった方法です。
しかし、建物であれば3つに切り分けるわけにはいきません。
今回は不動産の共有をテーマにしていますが、
不動産以外で切り分けられないものは色々あります。
2 価格賠償
例でいえば、Aが土地を単独で取得する代わりに、
土地の価格の5分の2をBに、5分の1をCに
金銭で支払う方法です。(全面的価格賠償)
また、現物分割であっても、1人だけが角地だったり、
南向きで日当たりが良かったりと、
持分割合に合わせて分割するとが難しい場合があります。
そんなとき、分割によって不利になった人が、
有利になった人から、その有利・不利の差を
金銭で補ってもらうという価格賠償もあります。
(部分的価格賠償)
3 代金分割
どうやっても公平に分割できそうにないとき、
土地を売ってしまって、代金を持分の割合に応じて分ける方法です。
どのような方法で分割するか、
価格賠償をする場合、いくら支払うのかなどは、
共有者全員が合意すれば、協議が成立したとして
それで決まりです。
しかし、協議が成立しない場合、
共有者は裁判所に共有物分割訴訟を提起することができます。
(民法258条)
裁判所が共有不動産の分割方法を決めることになります。
裁判所は現物分割ができない場合や、分割により
価格が著しく減少するおそれがある場合、
共有物を競売にかけて、その代金を分割することがあります。
ところで、共有物分割にともない、
土地や建物について、ある共有者の持分を、
他の共有者に移転する登記手続きについて、
ある一定の場合、通常より登録免許税の税率が低く設定されています。
どういう場合かの説明は、今回は割愛しますが、
税率が低く設定されているのは、「売れない」「貸せない」かもしれない
共有状態の解消を促す意図もあると思います。
共有者はいつでも分割を請求できるという規定があり、
共有物分割訴訟が準備されているのも同様の意図だと思います。
「意図」は法律や税制の意図・・・つまり国の意図だと思います。
国が解消を促す共有状態。
遺産分割などで、共有にしようと思う前に、
もう一度、考えられてもいいのではないでしょうか。