不動産を売るとき権利書がなかったらどうなる?
以前、このブログで
権利書をなくしたときのことをお話ししました。
(ブログ「権利書を失くしたとき」)
権利書は再発行されませんが、
なくしたからといって権利はなくなりません。
将来、売るなどして名義変更をする、
担保に入れて銀行から融資を受けるなどのとき、
権利書が必要となりますが、
なくしている場合は、ないなりの手続きがあります。
今日はその「ないなりの手続き」のお話です。
手続きは3つあります。
売買での名義変更(所有権移転登記)で考えます。
1 事前通知
まず、権利書以外の必要書類をそろえて、
法務局に所有権移転登記の申請をします。
すると、法務局は売主に宛てて
本当に所有権移転していいですか?と、
手紙を送ります。(事前通知)
事前通知には、登記することに間違いがない場合、
売主が署名して実印を押す欄があります。
売主がその欄に署名・押印して、法務局に戻せば
所有権移転登記が完了して、名義は変わります。
法務局が通知を発送して2週間以内に、
署名・押印して法務局に戻さなければなりません。
2 資格者代理人による本人確認情報の提供
登記申請をする前に、司法書士など
登記手続きの代理ができる資格者が、
売主本人と面談して、省令で定められた本人確認資料で
本人の確認をします。
そして、そのことを報告書(本人確認情報)として、
所有権移転登記に他の必要書類と合わせて添付すれば、
法務局と売主の通知のやりとりはなく、
所有権移転登記が行われます。
省令で定められた本人確認資料は、
①運転免許証、パスポートなどならば1点以上
②健康保険証、年金手帳などならば2点以上 など
細かく規定されています。(不動産登記規則72条)
3 公証人による認証
売主は登記の申請書または委任状に
実印を押印しなければなりませんが、
それらの書類に公証人から認証を受ければ
必要書類のうち、権利書がなくても、
所有権移転登記ができます。
公証人が売主本人に面談し、本人確認をして上で
売主が署名・押印した委任状などに、
本人を確認した旨の「認証文」を付けてくれます。
4 注意点
特に、1の事前通知で手続きを行う場合に注意が必要です。
以前、ブログ「不動産の売買に司法書士が立ち会う訳」で触れたように、
不動産の売買では、代金の支払いと名義変更登記は、
引き換えに(同時に)行うことが、
売主、買主、双方の安全につながります。
もし、権利書なしで法務局に所有権移転登記の申請した最初の段階で、
売買代金を支払ってしまったとして、
その後、売主が通知書に署名・押印して法務局戻さなかったら、
買主に名義は変わりません。
買主は代金を支払ったのに、
不動産の名義は自分にならない危険があるのです。
事前通知で手続きを行う場合は、
通知に売主が署名・押印して法務局に戻すことと引き換えに
売買代金を支払う方が、買主にとって安全です。
代金の支払い日が決まっている場合、
それまでに、売主の手元に法務局からの通知が届いてなければなりません。
間に合うように、権利書なしでの
最初の段階の申請をしておかなければなりません。
売主は、売買をすると決まったら、すぐ、権利書を確認し、
もし、ない場合は、早めに不動産業者や
司法書士に相談することが大切です。
そうでなければ、買主に迷惑をかけることがあります。
※ 法律の改正により、現在、法務局からは
以前の権利書(登記済証)に代わり
「登記識別情報通知」が発行されまが、
イメージしやすいと考え、「権利書」という言葉を用いて説明しました。