成年後見制度について
今回は成年後見制度について
3つの類型についてお話しします。
1 3つの類型~後見・保佐・補助
成年後見には本人の判断能力の程度によって
後見・保佐・補助の3つの類型があります。
それぞれで、契約、遺産分割などの法律行為について
本人のみでできること、
後見人などの関与が必要なことに違いがあります。
※ 後見制度3類型のイメージ
後見→保佐→補助の順で、
本人の判断能力は高く
本人のみでできる法律行為の範囲も広くなります。
① 後 見
「精神上の障害により事理を弁識する能力(≒判断能力)を欠く常況にある者」
(民法7条)
本人が常に判断能力を欠く状態にあるような場合、
後見人が選任されます。
後見人は本人の代理人としてすべての法律行為を行います。
本人の行った契約などの法律行為は、取り消すことができます。
つまり、本人のみでは完全に有効な契約などはできないことになります。
(日常生活に関する行為は取消しができません。)
② 保 佐
「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」
(民法11条)
本人の判断能力が著しく不十分であるような場合、
保佐人が選任されます。
本人は、民法13条1項に規定された重要な法律行為をするとき
保佐人の同意が必要となります。
同意のない行為は、取り消すことができます。
その他、裁判所は特定の法律行為について
保佐人に代理権を与えることができます。(民法876条の4)
※ 民法13条1項(保佐人の同意を要する行為等)
一 元本を領収し、又は利用すること。 二 借財又は保証をすること。 三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。 四 訴訟行為をすること。 五 贈与、和解又は仲裁合意をすること。 六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。 七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は 負担付遺贈を承認すること。 八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。 九 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。 |
これらの重要な法律行為は、保佐人の同意が必要ですが
それ以外については、本人のみで有効にできる部分が
あるということになります。
③ 補 助
「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」(民法15条)
本人の判断能力が不十分であるような場合は
補助人が選任されます。
本人は、民法13条1項に定めた行為の内
裁判所が決めた一部の行為をするとき
補助人の同意が必要となります。
その他、裁判所は特定の法律行為について
補助人に代理権を与えることができます。(民法876条の9)
補助人が選任された場合、
保佐人が選任されたときと比べて
本人のみで法律行為を有効にできる範囲が大きくなります。
2 手続きについて
成年後見、保佐、補助のいずれの手続きも
本人、配偶者、四親等内の親族などが
家庭裁判所に申し立てて行います。
(保佐、補助には本人の同意が必要な手続きがあります。)
申し立てには医師の診断書が必要となります。
(診断書:福岡家庭裁判所のホームページより)
裁判所は、申立書や診断書の内容、申立人などからの聞き取り、
鑑定などから総合的に判断して
後見、保佐、補助の開始(または申立却下)の審判をします。
3 注意すべき点
申立時点で、後見人などの候補者を立てるのが通常です。
しかし、必ず候補者が後見人などに選任されるとは限りません。
司法書士、弁護士などの第三者が選任されることもあります。
売買や遺産分割をきっかけに
成年後見制度を利用することが多いと思いますが、
売買や遺産分割が完了して目的が達成できても
原則、本人が死亡するまで、後見人の業務は続きます。
裁判所などの監督下に置かれるため
必ずしも後見人の思ったとおりに
財産の処分や管理ができるとは限りません。
成年後見制度はあくまで本人のための制度だからです。
成年後見制度の利用は、
いろいろなことをよく検討した上で行わなければ
後で「こんなはずではなかった」ということになりかねません。