家族信託の動画「③受益者連続信託」の解説
家族信託の動画「③受益者連続信託~遺言を超えて」
(YouTubeサイトに移動します。
動画でも触れていますが、遺言で指定できるのは、
遺言者が死亡した時点での遺言者の財産の承継についてで、
遺言に基づき財産を承継した者が、その後、死亡したときの
財産の承継について指定しておいても効力はないと解されています。
動画の例では、夫が遺言でできるのは、自分が死亡したときに
自宅を妻に相続させると指定することまでです。
そして、子のいない妻が夫から相続した財産は
妻が死亡した時点で、妻に父母、祖父母など直系尊属がいない場合は
妻の兄弟姉妹(先に死亡している場合はその子)が相続人です。
遺言代用信託
動画で紹介した家族信託は、弟の息子が受託者ですから、
自宅不動産は弟の息子の名義になります。
しかし、動画「①基本的なしくみ」でも触れたように
信託において信託財産の実質的な所有者は受益者と考えられます。
この例でも、夫と妻がそれぞれ存命中は安心して自宅に住めることを
目的として信託を設定していますので、受益者である夫と
夫の配偶者である妻は当然自宅に住むことができます。
ところで、信託において受益者が死亡した場合、
信託契約などに何も定めがなければ、死亡した受益者の受益権は
通常の財産と同じ相続の対象として取り扱われます。
これに対して、信託契約などで「受益者Aが死亡した場合、
Bが受益権を取得する」と、次の受益者を指定しておくことができます。
動画の例で言えば、信託契約で「夫が死亡したら、
妻が受益権を取得する」と定めておけば、
夫の死亡後も妻は受益者として自宅に住むことができます。
つまり、夫が、自分が死亡したら自宅は妻が相続すると
遺言を書くことと同じことになります。
信託が遺言の代わりになるということで
「遺言代用信託」と呼ばれています。
受益者連続信託
遺言でできるのはここまでですが、
夫と弟の息子の信託契約の中で、「妻が死亡した場合、弟の息子が
受益権を取得する」と、さらに次の受益者を指定しておくことができます。
このように、最初の受益者が死亡した場合の次の受益者、
その受益者が死亡した場合のさらに次の受益者・・・
と、最初の契約などで、次々と受益者を指定しておく信託を
「遺贈型受益者連続信託」と呼びます。
このしくみを利用すれば、
例えば、熟年再婚で夫の財産を、実の息子を受託者として、
受益者を①夫 → ②再婚した妻 → ③実の息子と
最初から契約で指定しておけば、再婚した妻と実の息子には
養子縁組をしない限り相続関係はありませんが、
実の息子が最終的に残った財産を承継できます。
この受益者連続のしくみは、信託の非常に特徴的なしくみで
このしくみの利用のためだけでも、信託は検討する価値があると思います。
受益者連続信託については、次のブログ記事もご覧ください。
ブログ「受益者連続型信託」