家族信託の動画「②認知症対策」の解説
家族信託の動画「②認知症対策~自宅売却に備えて」
(YouTubeサイトに移動します。)
動画でも解説していますが、
認知症などで判断能力(意思能力)を
欠いた人のした契約は無効となります。
判断能力がなくなってからできることは
家庭裁判所に成年後見人を選任してもらうことです。
(以下、財産管理などをしてもらう人を「ご本人」と呼びます)
1 成年後見制度
成年後見制度は、判断能力を欠いたり衰えたりした人の
権利や財産を守るための重要な制度です。
高齢化社会の日本においてなくてはならない役割を果たしています。
その一方で、支出は必要最小限に、リスクは避けて、
財産を減らさないようにと、言わば「守り」に徹する傾向があります。
これは、ご本人が十分に意思を表示できない以上、仕方ない
ある意味、当然のことでもあります。
それがゆえに、「成年後見人が付くと、財産が凍結される」
(実際は凍結されません)と感じたり、
最近は司法書士・弁護士などの第三者が後見人に
選任されるケースが増えていますが、抵抗を感じる人もいます。
また、自宅の売却も、売却の必要性があり金額も妥当と
後見人が判断した上で、さらに、家庭裁判所の許可が必要で
親族の思うとおりにならないこともあります。
繰り返しになりますが、このような取り扱いはご本人の意思を確認できない以上、
当然であり、これが適切な運用だと思います。
きっと、ご本人が元気なら「誰も住まないならさっさと売りなさい」
と、言ってくれたに違いないとしても・・・
2 ご本人に判断能力があるうちなら
ご本人に判断能力があるうちなら、財産をこのように管理してほしい、
処分してほしいという考えや想いなどの意思を表示して
それを実現できる方法が考えられます。
その方法の一つが「任意後見制度」です。
裁判所に選任してもらう「法定後見」に対し、
「任意後見」は「自分に判断能力がなくなったら、
この人に後見人になってほしい」と「この人」と
公正証書で「任意後見契約」を結ぶことで成り立ちます。
契約ですので両者が合意すれば、どこまで任せるとか、
どのように財産を管理・処分してもらうかなど
比較的自由に決めておくことができます。
自宅の売却も権限を与えれば、裁判所の許可は不要です。
ただし、後見人として財産管理等ができるのは、
本人の判断能力がなくなって、家庭裁判所が監督人を選任してからです。
後見人となってからは監督人の監督下に置かれ、
裁判所が監督人から報告を受けますから、
結局、後見人は間接的に裁判所の監督下に置かれます。
監督人には司法書士、弁護士などの専門職が就任しますので、
ご本人の財産から報酬を支払う必要があります。
そして、別の方法の一つが「家族信託」です。
動画でも解説しているように、信託する財産は受託者名義になりますので
受託者に管理・処分の権限を与えておけば、
ご本人に判断能力があってもなくても後見人が選任されていても
受託者自身が売主となり、権限に従って自宅の売却ができます。
3 それぞれ異なる点や特徴
このように、後見制度はご本人の判断能力がなくなってから
後見人として財産管理等を開始できるのに対し、
信託であれば、受託者は即、財産の管理等を始められます。
(任意後見の場合、任意代理の委任契約を併用して対応することもあります。)
信託で管理・処分の対象となるのは信託した財産に限られ、
その後、取得した年金などの金銭や財産は
新たに信託財産に組み入れなければ、受託者は管理できません。
(ご本人が「信託財産に組み入れる」と意思を表示できる判断能力が必要です)
また、信託財産と関係のない契約をご本人の代理人として結ぶこともできません。
これに対し、法定後見の後見人はもちろん、
任意後見の後見人も契約で定めた権限内であれば、
後見人に就任した後にご本人が取得した財産の管理処分や、
さまざまな契約行為もできます。
後見人は直接的・間接的に裁判所の監督下に置かれますが、
信託の受託者を監督するのは受益者です。
(信託契約で信託監督人を置くことは可能です。)
これらそれぞれを、いい点と考えるか、悪い点と考えるかは
ご本人の考えや状況によると思います。
すぐに財産管理を全面的に任せたいか、
誰が監督することを望むかなど・・・
一部の財産は信託で売却をし易くておいて、
その他の財産の管理や将来の契約に備えて
任意後見契約も結んで両者を併用するなど・・・
ご本人に判断能力があるうちであれば、
ご本人の考えや状況に応じて、
家族信託や任意後見などでの対策を検討することが可能です。
※ その他の動画(YouTubeサイトに移動します)
ホームページ「家族信託」のページもご覧ください。