今回は、今まで何度かお話しした
「受益者連続型信託」のお話です。

例 3 店舗を長男から次男の息子に承継させたい

  私は長年、うどん屋を営んできました。               
  最近は高齢となった私に代わり、長男が実質的な経営者です。
  ですから店の経営は長男の代までは安心ですが        
  長男の息子は大学卒業後、教員になりました。          
  まず、店を継ぐことはないと思います。               
  ところが数年前から次男の息子が店を手伝うようになました。 
  次男の息子は仕事の覚えも早く、                  
  客商売にも向いていて、店が活気づいたように思います。   
  まだ遠慮して口には出しませんが、                
  長男の後は自分が店を継ぎたいと思っているようです。    
  私もそうなれば安心なのですが、私名義の店舗は、      
  私が死んだら長男が相続するとして、               
  その後、店を継ぐ次男の息子は長男の相続権はありません。
  次男の息子に店舗を承継させる方法はないでしょうか・・・   

  
1 遺言を利用する方法

遺言では、自分の死んだ後に発生した相続について
財産を承継する者を指定することはできません。
「店舗は長男が相続し、長男が死んだら次男の息子が承継する」
という遺言を残しても、次男の息子は承継できません。

ならば、父が「店舗は長男が相続する」と遺言をし、
長男が「店舗は次男の息子に遺贈する」と遺言すれば
父の願いはかなえられそうです。

しかし、長男はその気になれば、
いつでも遺言を書き替えられます。
長男の一人息子や妻に反対されて書き替えるかもしれません。

2 家族信託を利用する方法

信託では、自分の死後、発生した相続について
実質的に財産の承継者を指定できます。

父を委託者受益者、次男の息子を受託者
店舗と土地を信託財産として信託を設定します。
また、父の死亡後は長男が受益権を引き継ぎ、
長男の死亡で信託は終了し、
店舗と土地(残余財産)は次男の息子が取得すると定めます。

店舗の所有権は次男の息子に移りますので、
信頼関係が不可欠ですし、不安もあるかもしれません。
しかし、受託者は受益者のために財産を管理するのであり、
財産から利益を受けるのは受益者です。
さらに、受託者は受益者の指図にしたがい財産を管理すると
定めておけば、最初は父が、父の死亡後は長男が、
管理について次男の息子に指図できます。

3 後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託

このように、受益者の死亡により、
他の者が新たに受益者となる信託を
後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託といいます。

最初の受益者をA、Aが死亡したらBが受益者、
Bが死亡したらC、Cが死亡したらD・・・と
信託を設定した当初に定めることができます。

しかし、信託設定から30年経った以降に、
受益者となった者が死亡すると、
その後に受益者となる者が指定されていても
信託は終了します。
(ブログ「信託の小まとめ」をご覧ください。

4 注意点

自分の死亡後、30年超先のことまで指定できることは、
便利である反面、30年後、事情が変わった場合でも
関係者を拘束し続けることになりかねません。
慎重に考えるべきでしょうし、信託の規定の中に、
途中で変更できる余地を残す必要もあるかもしれません。

遺留分減殺請求権の行使の対象となることにも
注意が必要ですが、詳しくは次回、お話しします。

角田・本多司法書士合同事務所