今回は、一度成立した信託の内容を
変更することについてお話しします。

信託では原則として、委託者、受託者、受益者が
当事者として登場します。

信託を変更したいとき、誰が変更できるのでしょうか?

1 信託契約などに定めがある場合

信託契約などに定めがある場合は、その定めに従います。
例えば「委託者と受益者の合意で変更できる」と定めてあれば
受託者の合意がなくても、委託者と受益者の合意で
信託の変更ができます。

2 信託契約などに定めがない場合

信託契約などに定めがない場合は、
法律の規定に従います。(信託法419条)

① 原則 → 委託者、受託者、受益者の合意

② 信託の目的に反しないことが明らかな場合
     → 受託者と受益者の合意 (委託者に通知)

③ ②+受益者の利益に適合することが明らかな場合
     → 受託者  (委託者、受益者に通知)

④ 受託者の利害を害しないことが明らかな場合
     → 委託者と受益者 (受託者に通知)

⑤ ④+信託の目的に反しないことが明らかな場合
     → 受益者 (受託者に通知、受託者が委託者に通知)

少しややこしいですが、軽微な変更ならば、
3者が合意しなくても変更できる場合がありますが、
重要な変更は委託者、受託者、受益者の3者の合意がなければ、
信託の内容は変更できないと考えた方がよいと思います。

3 注意する点

3者がいつでも元気でいればよいのですが、
そのうちの一人が死亡した、認知症で判断能力が衰えた、
とういことになると、3者の合意ができず、もはや変更はできません。

途中でまったく変更ができなくなるのでは、
不測の事態に対応できませんので、
信託契約などで、3者のうち誰かが欠けても
変更できるように定めておくことも考えられます。

一方で、あまりに簡単に変更できるように定めると、
委託者の当初の願いが、理由もなく変えられる恐れもあります。

ブログ「当事者が死亡した場合」でもお話ししたように、
当事者が欠けた場合、後任をどうするのか、
信託を変更できなくしないためにはどうしたらよいのか、
かといって委託者の願いが簡単に変えられないようにするには
どうしておけばよいのか・・・など、いろいろなことを想定して、
信託契約内容などを決めておく必要があります。

信託は自由で柔軟な設計ができますが、
それがために、決めておくべきことが多いとも言えます。

角田・本多司法書士合同事務所