株式会社 合同会社 設立するならどちら?
1 合同会社
平成18年に会社法が施行されて
新しく合同会社が設立できるようになりました。
合同会社は、合資会社、合名会社と合わせて
持分会社と呼ばれます。
3つの会社は、社員の構成に違いがあります。
※ 「社員」というと一般的には会社の「従業員」を表しますが、
この場合、出資者兼役員(株式会社で言えば
株主兼取締役)と考えるとイメージしやすいでしょう。
社員の構成 | |
合名会社 | 無限責任社員のみ |
合資会社 | 無限責任社員+有限責任社員 |
合同会社 | 有限責任社員のみ |
無限責任社員は、会社が債務を返済できないとき
自分の財産で返済する義務を負います。
会社の保証人になっているイメージです。
有限責任社員は、自分が出資した限度で責任を負います。
出資したものは返ってこなくても、
それ以上、自分の財産を差し出す必要はありません。
※ 債権者と社員個人が保証人となる契約をしている場合は
保証人の立場として自分の財産で返済する義務があります。
ところで、株式会社の株主も有限責任で
会社が倒産しても、損害は出資した金額までです。
出資者が有限責任という意味で、
株式会社も合同会社も同じです。
そこで、会社を設立するにあって
株式会社、合同会社のどちらがいいか?
と、たずねられることがあります。
では、違いはなんでしょうか?
2 株式会社と合同会社の比較
① 出資者と役員の関係
合同会社は、出資者=役員です。
株式会社は、出資者=役員でなくても構いません。
(「出資と経営が分離している」と言われています。)
しかし、1人株主で、その株主が1人取締役ならば、
出資者=役員となるわけで、
個人事業を株式会社にした場合など、
出資した人がそのまま役員になるケースは多いと思います。
そうすると、出資者と役員の関係で
株式会社と合同会社との差はなくなります。
② 定款での自由度
株式会社は、株主総会など内部統治についてや、
配当などについて細かく法律で規定されています。
株主が必ずしも経営に参画しませんので、
法律に基づいて、透明度が高い状態で運営されなければ、
株主は安心して出資できません。
合同会社は、出資者が経営に参画するのが原則ですから、
株式会社に比べると、
定款で自由に運営方法を定めることができるようになっています。
例えば、配当についても、株式会社が
持ち株数に応じてなされるのが原則であるのに対し、
合同会社は、定款で定めれば、
出資した割合と異なる割合での配当も可能です。
しかし、これも、株主がそのまま取締役となる
小規模な株式会社では、
株主がそのまま会社の運営も行うわけで、
また、ほとんど配当は行われず、役員報酬で
実質的に利益が配分されていることが多いと思います。
そうすると、この点でも両者にあまり差はなく、
細かく法律で規定されている株式会社の方が、
窮屈に感じるかもしれません。
③ 決算書類の公告義務
株式会社には決算書類の公告義務があります。(会社法440条)
合同会社には公告義務はありません。
④ 設立費用
株式会社は、設立時登録免許税が最低15万円
定款認証手数料が最低約5万円かかります。
合同会社は、登録免許税が6万円ですし、
定款認証の必要はありません。
⑤ 知名度
株式会社を知らない人はいないでしょうし、
役員は名刺に「代表取締役社長」「専務取締役」など載せています。
合同会社はできて6年程しか経過しておらず、
知名度は株式会社よりは劣っています。
役員が名刺に「代表社員社長」「業務執行社員」などと載せても、
「社員が社長?」と思う人がいるかもしれません。
3 どちらがいいのか
今後、資金を集めるため、
多くの人に出資してもらおうと考えているのであれば、
株式会社が適しているのは間違いないと思います。
では、個人事業を法人化する、
家族や身内で会社を設立するなど
株主がそのまま役員で今後のそのつもり
というような場合はどうでしょうか。
設立コストは、合同会社の方が
最低でも9万円ほど安くあがります。
決算公告が必要か不要かもコストの差になります。
それからやはり、無視できないのは知名度ではないでしょうか。
知名度は信用度にも結びつくといえます。
商売する上で、知名度・信用度は重要なのは言うまでもなく
「合同会社?聞いたことないな」と思われるだけで
商売上、マイナスに働くこともあり得るかもしれません。
しかし、言ってしまえば名前だけの問題だ、
会社の中身で勝負するから関係ない、
コストはできる限り安い方がいい、
当面は今まで長い付き合いの取引先との
商売だから知名度・信用度は問題ない・・・
そういう場合は、合同会社も選択できると思います。
現在の時点では、株主=役員の会社であれば、
知名度とコスト以外に絶対的・決定的な差は
必ずしもないと考えています。
とすれば、①から⑤までをふまえた上で、
ご自身の考え方や価値観でご判断いただいています。